雑損控除
1 雑損控除の概要
災害又は盗難若しくは横領によって、資産について損害を受けた場合等には、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを雑損控除といいます。
2 雑損控除の対象になる資産の要件
損害を受けた資産が次のいずれにも当てはまること。
(1)資産の所有者が次のいずれかであること。
イ 納税者
ロ 納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族で、その年の総所得金額等が48万円以下(令和2年度以前は38万円以下)の者。
(2)棚卸資産若しくは事業用固定資産等又は「生活に通常必要でない資産」のいずれにも該当しない資産であること。
対象とならない資産
(1) 別荘など趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で保有する不動産(平成26年4月1日以後は同じ目的で保有する不動産以外の資産(ゴルフ会員権など)も含まれます。)
(2) 貴金属(製品)や書画、骨董など1個又は1組の価額が30万円超のものなど生活に通常必要でない動産 ⇒譲渡所得の計算上差し引かれる経費となります。
(3) 棚卸資産や事業用固定資産の損失(被災事業用資産の損失) ⇒事業所得の必要経費となります。
3 損害の原因
次のいずれかの場合に限られます。
(1) 震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
(2) 火災並びに鉱害、火薬類の爆発など人為による異常な災害
(3) 害虫、害獣などの生物による異常な災害
(4) 盗難、横領(詐欺や恐喝の場合には、雑損控除は受けられません。)
4 雑損控除の金額
次の二つのうちいずれか多い方の金額です。
(1) (差引損失額)-(総所得金額等)×10%
(2) (差引損失額のうち災害関連支出の金額)-5万円
(注) 損失額が大きくてその年の所得金額から控除しきれない場合には、翌年以後(3年間が限度)に繰り越して、各年の所得金額から控除することができます。
なお、雑損控除は他の所得控除に先だって控除することとなっています。
5 差引損失額の計算のしかた
差引損失額 |
= |
損害金額 |
+ |
災害等に関連した やむを得ない支出の金額 |
- |
保険金などにより 補てんされる金額 |
(1)「損害金額」とは、損害を受けた時の直前におけるその資産の時価を基にして計算した損害の額です。
なお、平成26年分から、損害を受けた資産が減価償却資産である場合には、その資産の取得価額から減価償却費累積額相当額を控除した金額を基礎として損害金
額を計算することができます。
(2)「災害等に関連したやむを得ない支出の金額」とは、「災害関連支出の金額」に加え、盗難や横領により損害を受けた資産の原状回復のために支出した金額をいい
ます。
(3)「保険金などにより補てんされる金額」とは、災害などに関して受け取った保険金や損害賠償金などの金額です。
災害関連支出の金額とは
(1) 災害により住宅家財等が滅失し、損壊し又は価値が減少したことによる当該住宅家財等の取壊し又は除去のための支出その他の災害に付随する支出
(2) 災害により住宅家財等が損壊し又は価値が減少した場合その他災害により住宅家財等を使用することが困難になった場合において、その災害のやんだ日の翌日から1年を経過する日までにした次に掲げる支出その他これに類する支出(大規模な災害の場合その他やむを得ない事情がある場合には3年を経過する日までにした支出)
イ 災害により生じた土砂その他の障害物を除去するための支出
ロ 住宅家財等の原状回復のための支出(災害により生じた住宅家財等の損失の金額に相当する部分の支出を除く。)
ハ 住宅家財等の損壊又は価値の減少を防止するための支出
(3) 災害により住宅家財等につき現に被害が生じ、又はまさに被害が生ずるおそれがあると見込まれる場合において、住宅家財等に係る被害の拡大又は発生を防止するため緊急に必要な措置を講ずるための支出
6 雑損控除を受けるための手続
確定申告書に雑損控除に関する事項を記載するとともに、災害等に関連したやむを得ない支出の金額の領収を証する書類を添付するか、提示してください。
給与所得のある方は、このほかに給与所得の源泉徴収票(原本)を申告書に添付してください。
7 所得税との関連
雑損控除とは別に、その年の所得金額の合計額が1000万円以下の人が災害にあった場合は、災害減免法による所得税の軽減免除があり、納税者の選択によりどちら
か有利な方法を選べますが、住民税所得割においては、その年に災害減免を受けても翌年度に雑損控除が認められます。